上演団体向け劇場で感染対策を考えるためのガイド

緊急事態宣言前に、都内で上演を行っていた団体の対応例をもとに、これから上演を行う団体に向けて、劇場での対応を考えるための一つのガイドです

これだけでは十分ではないかもしれませんし、状況によってはここまでする必要はないかもしれません

感染の広がりや、季節・地域、公演内容や、観客数、会場などの状況によって変わりますので、この内容を一つの参考として、さらに可能な必要な対策を加える・あるいは削るなどして、上演時の感染対策にお役立てください

目的

何のために感染対策をするのでしょうか?以下の、4つをバランスよく達成することが必要と考えます

  • 観客・出演者・スタッフの新たな感染を防ぐ(安全な環境を作る)
  • 安心して、観劇できる環境、上演に集中して観てもらえる環境をつくる(観客に楽しんでもらう)
  • 万一、感染者がいたことが分かった場合に、追跡できるようにする(来場者の連絡先の把握)
  • 経済的に、効率よく感染対策をおこなう(無駄を省く)

計画を立てた後、これらがバランスよく達成できているのか、見直してみてください。

事前告知

観客に、以下の内容を事前に知らせ、協力を求めます。

  • 体調不良の方の来場を、遠慮してもらう
    • 風邪に似た体調不良のある方、来場前に37.5℃以上の発熱のある方など)
  • マスクを各自持参してもらう
  • チケット代などを当日会場で精算する場合は、お釣りのないように持ってきてもらう
  • 換気のため、空調が効きづらい場合があるので、脱着しやすい服装できてもらう
  • 感染対策のため、来場者の名前・連絡先を記録すること、必要に応じて保健所等の公的機関へ提供することがあることを了承してもらう
  • 可能であれば、チケットの半券(回収する側)に名前・連絡先を事前に書いてきてもらう
  • 状況の悪化のため、やむを得ず中止・延期する場合に備え、中止・延期の告知方法を事前に決めて知らせておき、来場前に確認してもらう
    • いつまでに発表するのか、その方法はどうするのか
  • チケットを購入した方が体調不良で来場しない場合への対応(返金するかどうかなど)を決めて知らせておく

座席の配置・スケジュールの計画

  • 舞台から客席までの距離をとる
  • 他の客席と間隔を取る方法を考える。
    • 例えば、入場者数を、客席の50%程度に抑え、自由席にするなど
  • 対策前より、開場・退場に必要な時間がかかる場合もあるので、スケジュールに余裕を持っておく
  • 咳をするひとが近くにいるなどの理由で、座席を変えたいという人が出る可能性があるので、指定席の場合は、予備の座席を多めに用意しておく

参考

  • 客席を1席おき、前後に並ばないように観客が座るようにすると、観客の距離は約1m弱前後、客席数は劇場定員の45~50%程度になります。
  • 観客の距離が約2m程度離れるようにするには、劇場定員の13~15%程度になります。

(劇場の大きさや客席配置によって変わるので、正確な数は客席図面で確認してください)

出演者・スタッフの感染予防

  • 楽屋口にアルコール消毒液を用意する
  • 出演者・スタッフは、劇場入りの際に手指のアルコールを消毒し、こまめにするよう手洗いを呼びかける
  • お弁当・ケータリング等の場所に、アルコール消毒液を用意し、消毒・手洗いを呼びかける
  • 楽屋割りを、過密にならないように、広い場所に分散するようにする
  • 劇場内にいる時間が極力短くなるよう、なるべく遅く劇場に入り、なるべく早く劇場から退出する
  • 名簿またはスタッフパスを作り、劇場に入る出演者・スタッフ・関係者を把握する

入場前の準備

  • 開場前に、観客の手の触れる場所をアルコール消毒する
    • ドアノブ、客席の肘掛け、背もたれ、手すり、トイレ等の蛇口、洗浄レバー、トイレの内鍵、自動販売機・エレベーターのボタンなど
  • 受付・ロビースタッフは、マスクを着用する
  • 可能ならば受付に、ビニールカーテンなどを用意する
  • 開場時間前に人が密集しないような入場方法を検討する
    • 開場時間前に来てしまった人は、風通しの良い場所で待機する、ベンチなどを密集しておかないなど
  • 開場時間を遅らせることがないよう、舞台監督・スタッフと打ち合わせておく
  • 可能ならば、ロビーに次亜塩素酸水噴霧器などを配置し、消毒をおこなう
  • ロビー、客席の換気を十分におこなう
  • リハーサル等の間に、換気をしながら上演できないか確認する
    • 客席にいて換気音がうるさくないか、空調(温度)は適切か、ロビーや他の施設に音が漏れないかなど

観客の入場

  • 入場前に列ができてしまう場合、距離をおいて並んでもらう
  • サーモグラフィや、非接触体温計などが用意できる場合は、検温して、37.5℃以上の発熱のある方には入場を遠慮してもらう
  • チケットは、入場者本人がチケットをもぎり、用意したカゴ等に半券を入れてもらう
  • 手指のアルコール消毒をしてもらう
    • アルコールを配るスタッフがついて、スプレーを観客の手に吹きかけるか、自動のアルコールディスペンサーを使うなどして、観客がスプレーのノブを触らなくてもよいようにする
    • アルコールでかぶれる方もいるので、観客に尋ねてから吹きかける
    • アルコール消毒できない場合は、トイレなどで手を洗ってもらう
  • パンフレット等を配布する場合は、人が手渡さず、テーブルの上に山積みにしておき、一人1部づつ取っていってもらう

上演中

  • 開場・上演中・休憩・退場中も、なるべく換気をおこなう
  • 開演前に、感染対策についてアナウンス等で観客に告知する
  • 上演中も観客にマスクをしてもらう、咳エチケットに協力してもらう
  • 極力、定刻に開演する
  • 上演時間が無駄に長くならないようにする
  • 観客と出演者が接近しないよう、客席からの登退場、客席に下りるような演出を避ける
  • 観客と出演者の間で、プレゼント等の受け渡しをしない
  • 上演後、ロビーが混雑するような構造の劇場では、時間差で順に退場するよう、主催者が誘導する
  • マスクをせずに咳をする観客がいた場合は、マスクを配布し着用してもらう

休憩中・終演後

  • 物販などを行う場合は、人が密集しないような販売方法をとる
  • 多くの人が同じ物を触らないよう、販売物の見本を触らないような展示方法にする
  • トイレに人が密集しないよう、間隔をとって並んでもらうよう、誘導員をつけるか掲示をする
  • 事前に観客の連絡先が収集できない場合は、アンケート用紙などに名前・連絡先を記入してもらい、終演後に回収する
  • アンケート用紙を配布する場合は、筆記具を使いまわししないでいいように、使い捨て鉛筆(クリップペンシル)等を一緒に配布する
  • 退場時にも、アルコール消毒をおこなう

注意点

  • スタッフがアルコール消毒液を使用する場合は、手荒れを防止するため手袋をつけて使用する
  • 物のアルコール消毒をする場合はアルコールによって、ニスワックス、プラスチック、金属メッキなどが変色・変形する場合があるので、事前に施設管理者に確認してから使用する
  • アルコール濃度が60%以上(重量%)の消毒液は、危険物となります。消防法により、公演中、場内に持ち込むことは禁止されています
  • アルコールは引火しますので、火気の近くでは使用しない
  • 万一、感染者が発生した場合に、連絡ができるように終演後1ヵ月程度は、名簿・アンケート・チケットの半券等を保管しておく
  • 次亜塩素酸水の噴霧については、ウイルスへの効果・人体への害に対する評価が分かれていますので使用方法に留意する

事前に用意するもの

  • 消毒用アルコール
    • 消毒液にもよりますが、一人1回、3ml程度必要とされていますのでそれを目安に必要量を計算します
  • アルコール用スプレー
    • アルコールに対応したものでないと変色・変形します
  • 使い捨て手袋
  • 使い捨てマスク
  • 雑巾・ペーパータオルなど
  • 使い捨て鉛筆(クリップペンシル)

可能ならば

  • 非接触体温計・サーモグラフィ
    • わきの下や舌で測るより、測定される温度は低くなり、誤差が大きくなります。
  • 次亜塩素酸水噴霧器
  • アルコール自動ディスペンサー
  • ビニールカーテン

参考サイト

https://www.zenkoubun.jp/info/2020/pdf/0514covid_19.pdf
劇場、音楽堂等における新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドライン 全国公立文化施設協会(略称:公文協)

https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/hp-kouhouka/pdf/020417-2.pdf
消毒用アルコールの取扱いにご注意ください 東京消防庁

https://www.meti.go.jp/press/2020/05/20200529005/20200529005-3.pdf
次亜塩素酸水の空間噴霧について(ファクトシート)  経済産業省 製品評価技術基盤機構


20/6/2 追記:次亜塩素酸水の噴霧について追記しました。

 

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